Sunday, August 19, 2012

phy01 em01 電磁波01

http://www.eto.titech.ac.jp/contents/sub04/chapter04.html

Tokyo Tech ETO東京工業大学
電磁波のシミュレーションと視覚化 ~光と電波~
Chapter04 平面波、偏波
 図4-1に示す、2章で説明した微小ダイポールからの放射をもう一度見てみよう。左右の部分に着目すると、微小ダイポールからはるか遠方で見たときは、平面波と見なすことができる。平面波とは進行方向に垂直な断面内で、電磁界が一様な電磁波である。
遠方では平面波→図4-1 微小ダイポールからの放射←遠方では平面波
図4-1 微小ダイポールからの放射

直線偏波


図4-2 直線偏波
電磁波は横波(変位方向と進行方向が垂直)なので、波の変位の向きによる違いである偏波(polarization)という現象が存在する。まずは図4-2に代表的な直線偏波(LP; linearly polarized wave)を示す。赤い線は電界の強さと向きを表しており、青い線は磁界の強さと向きを表している。電界、磁界ともに向きは進行方向(z方向)に垂直な横波である。また、電界と磁界も直交しており、電界から磁界に右ネジを回す方向に進行する。電界と磁界の比は波動インピーダンス、あるいは界インピーダンスη=√(μ/ε)≒120π≒377 [Ω]となっている。
 このように、電磁波は振動する電荷(波源)から切り離されて伝搬し続けることができる。ファラデーが導入した場(field)あるいはの概念は時間的な変化を考えない場合(電磁気学)は導入しても、しなくてもどちらでもよかったが、電磁波を説明するには本質的に必要となる。その意味で、電界と磁界は存在すると言うことができる(科学において「存在する、実在する」とはどのようなことかをあえて説明するならば、導入すると世の中を矛盾なく説明できる概念と言ってもよいだろう)。

円偏波


図4-3 右旋円偏波
図4-3のCは右旋円偏波(RHCP; right-handed circularly polarized wave)を示す。AとBは同じ方向に進む直線偏波であるが、電界の向きは直交しており、振幅は等しく、位相は90°ずれている。これらを足し合わせるとCのようになる(マクスウェルの方程式の線形性より、重ね合わせもまた解である)。このような偏波は、ある場所での電界・磁界の軌跡が円になるので円偏波(CP; circularly polarized wave)と言う。特にこの場合は場所を固定して進行方向を見たとき、時間とともに右回りに電界と磁界が回転するので右旋円偏波と言う。

図4-4 左旋円偏波
図4-4のCは左旋円偏波(LHCP; left-handed circularly polarized wave)を示す。右旋円偏波において、A, Bの直線偏波の位相のずらし方を逆にすると得られる。場所を固定して進行方向を見たとき、時間とともに左回りに電界と磁界が回転するので左旋円偏波と言う。
 一般に、AとBの直線偏波の振幅と位相が、このような特殊な場合でないときは楕円偏波(elliptically polarized wave)となる。

偏波の使い分け


図4-5 偏波の使い分け
図4-5 偏波の使い分け
実際の無線通信では、上で説明した偏波を積極的に利用している。図4-5に偏波の使い分けを示す。地球上では水平面を基準にし、電界が水平面内にある直線偏波を水平偏波と言う。水平偏波と直交するように、電界が垂直(鉛直)方向を向いている直線偏波を垂直偏波と言う。主に、テレビ放送などの固定通信では水平偏波を用い(家屋の屋上にあるテレビ放送受信用の八木アンテナは導体棒が水平に置かれていることからもわかる)、ラジオ、携帯電話などの移動通信では垂直偏波を用いる。これは、7章で述べるような偏波による伝搬特性の違いによる。また、衛星放送やGPSなどでは、水平、垂直を合わせて受信するのが困難なため、円偏波が用いられる。
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